新入社員の時に、「お前とあいつどっちが可愛いか」と比較され続けた話

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いつもは飯だの旅行だのジュエリーだのにうつつを抜かした記事を書いている妻ですが、最近セクシュアルハラスメントとかジェンダーハラスメントについて考えることが多々あり、私が前に勤めていた会社で新入社員の時に起きた出来事をふと思い出しました。

何にも面白くない記事になると思うのですが、今日は私が書く番なので、成仏させるつもりでつらつらと書いていきますね。

入社して半年経った頃に長い研修を終えて、私は同期の女の子と、同じ営業部に配属されました。

名前は仮名でマリコさんとします。

マリコさんと私は半年に及ぶ研修の中で親友になりました。大学を卒業したばかりの私たちにとっては、職場なんてものは学校の延長線にあるようなもので、すぐに家族や恋人、今までの出来事をすべて分かち合うようにおしゃべりする仲になりました。

当時はそんなもんだと思っていましたが、十年経って転職してみると、そんな友人が職場で出来ること自体が奇跡のように思えてなりませんね。

マリコさんはギャルっぽい女の子で、非常にモテました。性格が良くて、明るくてノリが良くて、スポーツ万能なマリコさんは、おまけに大変賢く、先輩たちにすぐ可愛がられるような存在となりました。

一方の私はどうだったかと言いますと、それまで体育会系の世界に無縁だった為に、自分の一挙手一投足が人に評価されているということがよく分かっていない子だったと思います。

なのでその当時の挙動を思い出すと恥ずかしくて叫びだしたくなる気持もあるのですが、いわゆる「お局様」的な人たちには、なんとなく可愛がられていたような気がします。もちろん器用なマリコさんも可愛がられていました。

営業部は、100%男性の先輩たちで構成されていました。女性営業マンがいる部もありましたが、総合職の私たちが配属されたのは、大きな取引先をいくつも抱える、会社の主力とも言えるようなところで、そこには30代~60代の男社会の圧倒的な上下関係がありました。

そいういう場所に、23歳の女の子二人が飛び込んだわけです。今思い返すと、とても気を遣ってもらったと思います。

実際に、「あの課長は俺にはすごく怖かったけれど、お前には優しいよな」というように、「女だから優しくしてもらえた」ことはありました。「迂闊なことを言ったらセクハラになってしまう」と警戒をしてもらえたのは今考えると、とても有難いことでした。

でも私たちのキャラクターを知ると、遠慮がちにしていた男性陣の中には、ぐいぐいと距離感を縮めてくる人たちがいました。それは私たちと比較的年代が近い、20代中盤から30代前後の人たちでした。

彼らは私とマリコさんをよく比較しました。

顔。スタイル。飲み会の時に気の遣い方。話の面白さ。

「部署の誰が、どっちを気に入っている」というのは日常茶飯事でした。

驚くことに、私たちを評価するのは同じ部署の人に限りませんでした。「名古屋支店のタナカさんは、お前の方がかわいいって言っていた」「札幌支店のクボタさんは、次の出張でマリコと絶対に飲みたいって言ってた」などなど、私たちを「どっちがいいか」判断する人は何故か全国各地にいました。

私は、この新入社員で入ってから三年近く続いたこれらの「マリコとお前、どっちがモテるか」という話を、ずうっと忘れていました。

その時、それが辛かったという記憶もありません。私たちは互いに、「マリちゃんのこと、あの先輩狙ってるらしいよ」「うそーきもいんだけど」などと笑い話にすらしていました。

でも10年経って、ある拍子にふと思い出したのです。もう互いに結婚をして、マリコさんは赤ちゃんを生んで、私は新卒で入った会社を退職しました。先日、赤ちゃんを旦那さんに見てもらってマリコさんとランチに行きました。私たちは今起きていることに精いっぱいで、マリコさんは赤ちゃんの予防接種の多さに驚いた話をして、私は面白おかしく前と今の会社の比較なんかをしました。

それが今になって、急に思い出したのです。マリコさんと私が、どんな思いで、あの職場で働いていたのかを。

私はびっくりするほど今になって、急に怒り出しました。

ふざけているのかよあいつら。全員死んでくれよ。死なねえなら全員、私たちに額を床にこすりつけて、謝って。私とマリコに、謝れよ。

あの頃、私とマリコさんは、びっくりするくらいの量の水割りを作り続けました。飲み会のテーブルの隅で、おかわりが滞ると怒られたから、氷や焼酎の量を代わる代わる二人で見張っていたのです。私とマリコさんは嫌な思いを互いにしないように、本当は飲み会でずっと隣の席に座っていたかったけど、「お前らはくっついて座るな」と怒られるから、いつも離れて座らせられました。

だから二次会になると逃げるように消えて、二人で帰りにケーキを食べた。社用携帯が何度も鳴りました。

「お前らどこにいるんだよ」

「一緒にカラオケいこうって、課長がさびしがっているよ」

一度マリコが電話に出ると、怒った一個上の先輩から「お前らウザいんだよ!」と怒鳴って切られました。

なんだったんだあの時代は。狂っている。今なら思います。でもそういう職場が2010年以降になっても存在したのです。

その会社は一日に何度かテレビで広告CMを打つような大きな会社でした。セクハラパワハラ研修も毎年ありました。CSR報告を毎年HPで大々的にやって、海外のどこどにどんな援助したのかをレポートにするような立派な会社でした。

でもあの職場は、酷かったと思います。言葉に尽くせないほどに酷かった。今もしも、あの職場に私が30代の女性の先輩で、もしもマリコたちが営業部に入ってきたら?

庇ってあげたかったです。接待でもないのに、仲間うちで水割りなんて作るなと言えばよかった。社内通報して、二度とマリコたちの顔や、胸の大きさや、髪の毛の艶について、誰もコメントを発する権利はないことを知らしめたかった。

起きたことはもうどうしようもないのです。

どうしようもないけれど、今になって怒れて良かったあと思います。怒って良かったということが分かって、良かった。

もはやこの経験から何か良かったことがあったとするならば、「次に同じ場面に出遭ったら、迷いなく相手を社会的に殺す」くらいでしょうか。

という何のオチもない話なのですが、供養として書いておきます。

マリコ、授乳が終わったら、またビールいっぱい飲もうね。

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