竜とそばかすの姫 ネタバレ感想

映画・ドラマ

竜とそばかすの姫は2021年7月15日に公開されて、早速観に行ってきました。

ネタバレです。




音楽は最高、中村佳穂という歌手を知れたことの喜び

最近TVでカラオケバトル番組を観ていて、プロとカラオケがただ上手い人との違いってなんなんだろうと考えていたのです。

色んな人が出てくるんですが、たま~に、「もう音程とかどうでも良いけれどずっとこの人の歌を聞いていたい」という気持ちになる人が現れるんですよね。

この映画は、中村佳穂さんというシンガーソングライターを主人公の声優に据えて、素晴らしい歌声を何度も披露してくれるのですが、まさしく「この人の声をずっと聴いていたい」と思えて、もう最高。

あんなに難しい歌をよくここまで歌い上げるなという驚愕とともに、なんてピュアで優しい声質なんでしょう。

この歌声を聞く為に、この歌手を見出す為に作られた映画だと言っても過言ではないほど、めちゃくちゃ良かった……。

冒頭の太鼓から始まる楽曲は、常田大希さん作曲。どおりでかっこいいわけだ。

最後のエンドロールでもこの曲流してくれないかなと期待しつつ叶いませんでしたが、映画の帰り道に何度も聴いてしまいました。

ネット人格の正体は暴かれるべきではないと描きつつ、自ら晒すのは美徳?

このお話の大きなテーマのひとつは、仮想空間におけるキャラクターの実体が何者なのかを、人は暴く権利があるのか?ということ。

映画では「ネット上の嫌われ者の正体を暴きたい人たち」が竜を追い掛け回します。

これを見て「なるほど、無理矢理誰なのかを暴き出すのはかわいそうだな」と思うのですが、次のシーンでは主人公のベルがしつこく「あなた誰なの」と城に押し入り、かつ居座り続けるシーンが続いて、「な、なにがしたいんだこの女は……」という気持ちにさせられました。

最終的にすったもんだで竜からの信頼を得る為に、自らの実像をすずは晒しますが、「ネット人格の正体を暴く権利は誰にもない」というテーマなのに、自分から「本当の私はこうなんよ」と晒すのは良いこと……みたいに描かれるのは、ちょっと不思議でした。

田舎の女子高生と言えども、顔を晒してこれからすずは平和にやっていけるのか不安にもなります。

でも余談ですが、竜を虐めるジャスティンというキャラクターは見ていて楽しかったですね。

スポンサーがついた鬼女なんて、マジで鬼に金棒ですわ。

竜を助ける行為は、現実世界のみを頼りとしなくても良かったのではないか

本作で一番不可解だったのは、精神的に父親から激しい虐待を受ける兄弟の存在を知った時に、何故すずちゃんが一人で高知から東京に行ったのかということ。

そもそも小学校で、合唱隊の一人が「もしもし、保護して頂きたい子供がいるのですが……」と電話をかけたのは、いったいどこだったのでしょうか。ふつう警察にかけると思うんですが、何故か「48時間以内対応」と答えられていて、観ている側はみな強い違和感を覚えたと思います。

石黒賢が声優を務める、金持ちそうな父親が怒り狂いながらライブ配信を切断した時に、「ああ、このままだと子供たちが殺される」と思いました。本来、すずちゃんが夜行バスに乗って助けに行くのでは、対応が遅すぎます。

警察に「子供が虐待されている動画がライブ配信されていて、父親にバレた」と通報すれば一発で済む話なのに、そこを無理矢理「現実世界でも行動を起こす主人公」を描く為に、雨の中、武蔵小杉的なエリアをさまようという展開は、やっぱり無理矢理すぎないか。

というか、この時こそインターネットの力を借りても良かったのではないでしょうか?

ベルの信者たちの中には、善良でまっとうな東京在住の市民もいると思いますので、その人たちに力を借りても良かったと思います。

須崎から単身女子高生が旅をするのは、せいぜい「好きな男の子に会いに行く」くらいの用事が現実的で、「暴力的な父親から見ず知らずの兄弟を庇いに行く」のはヘビーすぎる。

しかもすずちゃん、石黒賢に頬を爪でえぐられてますから傷害罪適用されてますし、すずちゃんのお父さんは呑気に高知で娘の帰りを待っていないで、娘を迎えに行くついでに石黒賢をしばきに東京に出てくるべきでは? などと突っ込みどころはとても多かったです。

話はめちゃくちゃだが、それでもベルというアバターは美しい

この映画を観て久しぶりに、「こんなに可愛い女の子キャラクターは久しぶり」と思いました。とにかくベルの表情や衣装が本当に可愛い。

冴えない女の子が美しく変身するのって、何度見てもいいですね。白飯が美味しくなります。

このUという仮想空間の面白いところは、「自分でアバターを作る」ことができないところですね。その発想自体は本当に天才的に面白い。

生体情報を読み取って勝手に自動作成されてしまうので、すずが誰もが目を惹くような美しい容貌を手に入れるというのは、とても夢がある設定でした。

元々の作曲センスや美しい歌声が容貌に反映されたのだと思いますが、しかし「虐待を受けても弟を守る為に耐えている子どもは、醜い獣のアバターになる」って悲しすぎません?

美しい楽曲と素晴らしい映像は、それこそパレードのように心をときめかせてくれますが、もうちょっとストーリーが絞り込まれていたら良かったなあと思いました。

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